細胞周期の進行には、特定の蛋白質の合成と分解が特定の時期に起こることが必要である。本研究では、その中でも蛋白質の合成の調節に関わる因子に注目して、それらが細胞周期・細胞増殖に果たす役割を探ることを目的とした。 高等真核細胞のmRNAは細胞内で常に特定の蛋白質との複合体mRNPとして存在する。Yボックス蛋白質は、mRNPの主要構成因子であり、poly(A)末端ではなくmRNA bodyの部分に結合してmRNAの翻訳を調節していると考えられている。培養細胞を用いてYボックス蛋白質の機能を明らかにするため、これまでにトリDT40細胞のYB-1遺伝子破壊株を作成し、細胞増殖が遅くなることを明らかにした。さらに、通常39.5℃で培養する細胞を33℃に移すと、この遺伝子破壊株は全く増殖できなくなることがわかった。この条件下で、蛋白合成能の顕著な低下が認められた。低温条件下ではmRNAの二次構造が安定化されるので、上記の結果から、YB-1はmRNAの二次構造をほどき、翻訳装置がmRNAにアクセスできるようにするのではないかと考えられる。また、この遺伝子破壊株にエピトープタグつきのYB1を発現させ、免疫沈降でYB-1を含む複合体を調製した。その結果、RNA非依存的にYB-1と結合する酸性蛋白質YBAP1を同定した。生化学的な解析によって、YBAP1はYB-1をmRNAから引きはがすことによって、YB-1によって抑制されたmRNAの翻訳を回復させることがわかった。
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