研究概要 |
1.jmj遺伝子の発現制御機構 昨年度、絞り込んだ心筋細胞の増殖抑制期特異的な発現を制御するjmj遺伝子のゲノム領域の妥当性をさらに確認するため、jmj遺伝子自身の予想される基本転写領域(プロモーター)を用いて発現を検討した。この結果、これまでの外来プロモーターに比べ高効率で心臓特異性を再現でき、これまでの見出した発現制御領域が求めるものであることが確認できた。 2.jmj-サイクリンD1カスケードと増殖・分化相互作用 jmj変異体胚およびサイクリンD1発現トランスジェニックマウス胚心筋細胞に認められた上位転写調節蛋白質の発現低下を定量的に確認した。このため、組織切片上の心筋細胞に対する蛍光強度を測定し、GATA4, MEF2の発現が心筋の分化マーカーとともに顕著に低下することを突き止めた。この結果は、jmjがサイクリンD1の転写を抑制することにより、転写調節蛋白質の発現を維持し、分化状態を保つことを示唆する。同時に心筋細胞における増殖と分化のバランスの決定機構の一端を示すものである。一方、サイクリンD1発現が増殖亢進および分化状態破綻させることができる発生時期をサイクリンD1誘導トランスジェニックマウスを用いて検討したところ、胎生12-14日付近でこの能力がなくなることを発見した。すなわち、この時期までは心筋細胞は増殖・分化において柔軟な細胞であるが、これ以降、この柔軟性は失われる。現在、この柔軟性を決定する機序を探索中である。 3.神経系細胞の増殖・分化におけるjmj-サイクリンD1カスケードの機能 jmj変異体胚が示す延髄マントル層における神経前駆細胞の分裂異常に対し、サイクリンD1が下流遺伝子として機能しているか否かを解析した。その結果、サイクリンD1が本来発現のない延髄マントル層にて発現すること、jmj-サイクリンD1の2重変異体胚で分裂異常が消失することが示され、jmjがサイクリンD1を通じて神経細胞の前駆体の細胞分裂時期または位置を決定していることが示された。
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