研究課題
ラット胎生11.5-13.5日にかけて、終脳背側(将来の大脳新皮質背側領域)で産生された神経細胞の一群は終脳腹側へと移動し、終脳背/腹の境界移動方向を90度転換する。これらの神経細胞は新皮質発生過程で最も早くに生まれる神経細胞であり、プレプレートと呼ばれる層を形成する。正常胚では終脳腹側にはこれらの神経細胞は侵入しないが、Pax6機能欠損変異ラット胚ではこれらの神経細胞の方向転換がおこらず、終脳腹側へこれらの細胞集団が侵入する。これまでの研究により、終脳腹側にephrin-A5が、また移動する神経細胞の細胞表面にEphA4が特異的に発現していることが明らかとなっている。またephrin-A5を強制発現した場合、背側から移動してくる神経細胞はephrin-A5の強制発現領域には侵入できない。さらにephrin-A5の機能欠損マウスでは終脳背側から移動してくる細胞が背/腹境界で方向転換せず、終脳腹側へと侵入するという、Pax6変異胚と同様の表現型を示す。以上の結果より、Pax6遺伝子はephrin-A5の発現を制御することで、終脳背側から腹側へと移動する神経細胞の移動様式を制御していることが明らかとなった。さらにこれらの細胞移動が異常になった場合、どのような皮質構築過程が異常になるかを調べる目的で、胎生18日目のPax6変異ラット胚とephrin-A5機能欠損マウス胚の嗅皮質の構造を詳細に検討した。その結果、ラット胎生11.75日(マウス9.75日)に産生される細胞は、野生型では嗅皮質の嗅索近傍(第I層)に特異的に局在することがBrdUパルスチェイス法によって明らかとなった。一方Pax6変異ラット胚とephrin-A5機能欠損マウス胚では、BrdU陽性細胞の第I層への局在が減少し、より腹側の嗅結節付近に蓄積していた。以上の結果は、終脳背側から移動する細胞は将来の嗅皮質第I層を構築すること、Pax6/ephrin-A5の機能がこの細胞の移動機構を制御していることが明らかとなった
すべて 2006 2005
すべて 雑誌論文 (2件)
Development 133
ページ: 1335-1345
The Journal of Neuroscience 19 (25)
ページ: 9752-9761