研究概要 |
ニワトリ胚を用いた解析 【器官培養】内耳形成の過程を「生」で解析するため,内耳原基の器官培養系の改良を進めてきた.2004年にマウス胚の内耳原基を用いた器官培養法の報告があり,これを応用する事でようやくニワトリ胚内耳の器官培養のめどが立ち,技術的基盤が整った. 【FRET】ニワトリ,マウス,人などの半規管は,耳胞の背側の膨らみが扁平化し,その中心に穴が開く事で形成される.この過程にはapoptosisが重要な役割を担っていると考えられている.しかしながら,固定した組織で観察している限り,本当に細胞死が起こった場所で最初に穴が開くのかを確かめられない.この点を明らかにするためFRET(Fluorescence response enaergy transfer)法を用いたcaspase-3活性化のリアルタイム検出を,試みた.しかしながらECFPとVenusとの組み合わせでは蛍光スペクトルの変化が少ないため,画像処理して蛍光強度の比を可視化する必要があり,実体鏡レベルでのタイムラプス観察は困難であった. ゼブラフィッシュミュータントを用いた解析 【ミュータント表現型の解析】ゼブラフィッシュの半規管形成は,耳胞内部への上皮の突出に始まる.この過程に異常を生ずるミュータントを昨年度に4系統分離し,解析を進めて来た.その内の一つは,上皮の突出が全く起こらず,半規管が形成されない.他の3系統は耳胞内部への突出形成が異常で,それぞれ表現型が異なるが,いずれも結果として三半規管の形態に異常が生ずる.これらのミュータントの耳胞で発現するマーカー遺伝子に異常が無いか検討する一方,細胞を蛍光ラベルして,個々の細胞の動態を野生型のそれと比較しながら解析し,どのような原因で形態形成の異常が生ずるのかを解析中である.また,原因遺伝子の同定も同時に進行中である.
|