FGF10添加による背中AER形成が魚類および爬虫類でも起こるかどうかを調べる目的で行ったFGF10添加による魚類および爬虫類胚の背中へのAER誘導において、新たにAER様構造が誘導されることを発見した。現在論文投稿中。 四肢位置を決めるメカニズムの多様性と相同性を解析するために、ガンギエイ胚を用いてshh遺伝子およびHox遺伝子群の発現解析を行った。トラザメ胚におけるshh遺伝子の発現解析からサメの鰭形成においてもshhによる前後軸形成が行われている可能性を見出した。また、Hox遺伝子群の発現解析からは、軟骨魚類群が独自の軸形成システムを有している可能性を見出している。 一方で、ニワトリ胚の胚操作を用いた実験から、四肢形成因子のひとつであるTbx5遺伝子が、上皮-間充織転換を引き起こす因子として働きうることを見出した。これは、通常四肢領域にのみ発現するTbx5遺伝子を通常は発現しない神経管に異所的に発現させると、本来上皮構造をとり続ける神経上皮細胞が神経管から抜け出し、間充式様の細胞として移動し始めることから示唆されたものである。このことは、肢芽領域の決定においてTbx5遺伝子が肢芽細胞の増殖に対してだけでなく、細胞の性質を変えることによって位置を決めている可能性を示唆するものである。また、移植実験により、このような肢芽領域及びわき腹領域の発生運命付けは肢芽が形成されるよりもずっと以前にすでに行われている可能性を示すデータを得た。それぞれ現在、論文準備中である。
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