研究概要 |
内柱・鰓裂は下等脊索動物を特徴づける咽頭器官であり、これらの器官の機能ならびに形成メカニズムを分子的に理解することは、脊索動物の体制の進化を考える上で鍵となる。 内柱研究においては、尾索類カタユウレイボヤと頭索類ナメクジウオの内柱関連遺伝子群:TTF-1,TTF-2,Pax2/5/8,Fkh, FoxQ1,TPOの発現比較解析をwhole-mount in situ hybridization法を用い、TTF-2の内柱の甲状腺相同領域における発現は下等脊索動物ですでに獲得されていること、各内柱関連遺伝子の遺伝子発現パターンはホヤ・ナメクジウオ間で保存されており、内柱の中央領域ゾーン1〜4はそれぞれ相関関係があるもののその側方領域が多様化していること、神経ペプチドをコードするtachykininがカタユウレイボヤ内柱の側方領域で顕著に発現することを論文として報告した。さらに、分泌機能研究においては、CiEnds1関連遺伝子がカタユウレイボヤゲノム中に計5遺伝子存在し、発現パターンは類似するものの遺伝子構造としては2タイプに分けられること、17beta-hydoxysteroid dehydrogenase type IVがゾーン2で、mucin関連遺伝子(CLSTR04288)がゾーン6で特異的に発現することを見いだした。 一方鰓裂研究においては、カタユウレイボヤの鰓孔関連遺伝子を30以上同定し、Delta様遺伝子(CLSTR03441)が鰓孔形成初期の囲鰓腔上皮陥入部および鰓孔周縁の領域Bで発現が見られることから、鰓孔分化運命の決定に関与する可能性を見いだした。また、meichroacidinは領域Cで顕著に発現することから鰓孔の細胞分化の制御に、繊毛の構成成分であるtektin A1およびtektin B1は領域C・Dでそれぞれ顕著に発現することから繊毛の形成と維持に関与していると考えられる。鰓孔形成メカニズムの解析においては、鰓孔の新規形成だけではなく既存鰓孔の分断現象にも着目し、既存鰓孔の領域Dの中に領域Bが出現することが鰓孔分断の引き金になること、その後領域Bと領域Dの間に領域Cを作り出すことによりB-C-Dの領域配置が再構成されることを見いだした。
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