1.mab2112ノックアウトマウスの解析 mab2111遺伝子は脊椎動物ゲノム中でmab2112と遺伝子ファミリーを形成している。また、マウス発生過程における両遺伝子の発現は、鰓弓、肢芽、網膜など多くの領域で重複していことから、両遺伝子機能のマウス形態形成過程における冗長性が想像できる。実際ノックアウトマウスは、mab2111遺伝子の発現が観察される多くの領域で異常は観察されない。mab21遺伝子群の個体レベルでの機能を明かにするためmab2112ノックアウトマウスを作成し解析を行なった。ノックアウトホモ個体は胎生致死であり(E11-13で死亡)、眼(レンズおよび網膜)および体壁の形成異常が観察された。網膜の形成過程においてmab2112遺伝子はChx10の発現を制御していること、またBrdUの取り込みの解析から、網膜および体壁の形成過程においてmab2112遺伝子が細胞増殖の制御を行っていることが明らかになった。これはmab2111遺伝子のレンズ形成過程における機能と同じであり、形態形成過程において両遺伝子が共通の機能を果たしていることが明らかになった。 2.mab2111/mab2112ダブルノックアウトマウスの解析 mab2111、mab2112両ノックアウトマウスの解析を行なった結果、いくつかの形態異常が観察された。しかし、それぞれの遺伝子が発現している多くの領域で異常は見られなかった。これは両遺伝子の発現領域が重複しており、遺伝子産物のアミノ酸配列が類似していることから、機能の冗長性によりものと考えられる。そこで、mab21遺伝子群の発生過程における機能を明らかにするため、mab2111/mab2112ダブルノックアウトマウスの作製を行なった。このダブルホモマウスはmab2112ホモマウスと同様に胎生致死であり、死亡時期も形態異常もmab2112ノックアウトマウスと大きく違わない。このことは、mab2111遺伝子がmab2112の機能を補償できないということを示しているとも考えられるが、頭部、神経管など両遺伝子が重複して発現している領域の一部に小さな異常が観察されており、詳細な解析を行っている。
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