研究課題
神経堤細胞は神経管から発生する外胚葉由来の幹細胞であり、非常に多様な細胞(色素細胞、平滑筋、骨・軟骨などの間葉系細胞、神経細胞、グリナ細胞などの末梢神経系細胞、内分泌器官構成細胞など)に分化増殖する多分化能を有している。我々はまず神経提細胞の最終分化細胞である色素細胞をマウスES細胞から試験管内で誘導できる培養系を開発してきた。この色素細胞分化の途上で誘導されていると考えられる神経提細胞をとらえるべく、分化誘導系の詳細な解析を行った。誘導される色素細胞は培養液中にc-kit阻害抗体ACK2を加えると減少し、一方、Endothelin-3を加えると増加することから、c-kitシグナル、Endothelin-3シグナルに依存していた。また、胚の後方化に重要な役割を持つレチノイン酸を培養初期に加えたところ、色素細胞の出現効率が劇的に増加することもわかった。これらのことは、誘導される色素細胞は表皮色素細胞と同様の発生プログラムに沿って体幹神経堤細胞を経由して誘導されていることを示した。さらに誘導される色素細胞分化をより詳細に解析する目的で、色素芽細胞(メラノブラスト)のマーカーであるc-kitを指標にして、培養細胞をフローサイトメーターを用いて解析した。培養系を日ごとに解析していくと、培養9日目よりc-kit陽性細胞が出現し始めた。そこで培養9-12日目にc-kit陽性、陰性細胞をソーティングして各々再培養したところ、陽性細胞を再培養したものからは色素細胞を含む比較的大きなコロニーが優位に観察された。このコロニーにはGFAP陽性のグリア細胞もしくはTuj-1陽性の神経細胞が共存するものも存在した。以上のことは培養9-12日に生ずるc-kit陽性の細胞中には、メラノブラストのみならず、神経系およびグリア系へ分化が可能な未熟な体幹神経堤細胞様の細胞が含まれている可能性を示している。
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Pigment Cell Res. 17
ページ: 1-8
臨床整形外科 39
ページ: 1077-1081
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