研究課題
ES細胞から網膜を構成する各細胞、色素上皮、レンズなど眼の構成要素を誘導・分離することに成功し、培養眼と名付けた。本研究の目的は、発生システムを具現する最も単純なモデルとしてこの培養系を確立し、その利点を生かして眼という組織の誘導に必要な分子、あるいはその連鎖としての発生プログラムを実証的に解き明かすことである。培養開始後経時的に細胞を解離させ再び培養眼の分化条件に置いたところ、培養4日目頃までは完全な培養眼が形成されるが、その数は解離させないときと同数以下であったので、一つのES細胞から生じる眼様構造形成能を持つ細胞(単一の細胞でなく、いくつかの細胞の組みになって出現する細胞の可能性もある)は一個程度と考えられた。ニワトリで網膜幹細胞の増殖と層状構造の形成を促進することが報告されているWnt2bを添加すると、出現する総コロニー当たりの眼様構造の割合は1.5倍以上増加し、眼様構造のサイズも増加したので、マウスでもWnt2bが網膜幹細胞の増殖・分化を制御している可能性がある。培養眼中の網膜色素上皮前駆細胞を同定するために、Dct-lacZES細胞を分化誘導後経時的にDetectaGene-greenやImaGeneなどの生体lacZ活性蛍光検出試薬で処理し、セルソーターで精製することを試みたが、様々な条件を試したにもかかわらずバックグラウンドの高さを克服できなかった。同時に行ったE10マウスの網膜由来細胞の生体lacZ活性蛍光染色でも、同時に行ったX-gal染色では十分に検出されるlacZ陽性細胞が高いバックグラウンドでマスクされ検出されなかった。このシステムはRPE-SあるいはRPE前駆細胞の検出には不適と結論し、理研の大沢らにより樹立されたDct-GFPマウスからES細胞を樹立し、直接セルソーターで陽性細胞を検出することを試みている。
すべて 2006 2005
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