研究概要 |
【目的】申請者らは、ES細胞を用いた心血管分化研究を行ってきた。本研究は、ヒトES細胞においても系統的心血管細胞分化誘導できる新しい分化系を構築することにより、ヒトの発生および細胞分化機構を解明することを目的とする。すなわち、マウスで構築した心血管発生システムをモデルとして、ノックアウト動物の作製が不可能なヒトにおいても発生分化研究のできる新しい研究基盤を創出する。 【結果】ES細胞由来Flk1陽性血管前駆細胞から、ephrinB2陽性動脈内皮細胞とephrinB2陰性静脈内皮細胞を誘導することに成功した。また、Flk1陽性細胞からprox-1陽性リンパ管内皮の誘導および純化にも成功した(以上Yurugi-Kobayashi et al.,およびKohno et al.,投稿準備中)。ES細胞由来Flk1陽性細胞から単一細胞レベルで心筋を分化誘導することが可能な新しい心筋分化誘導システムを構築し、高い心筋分化能を有する心筋前駆細胞の同定に成功した(Yamashita et al.,論文改訂中)。また、テトラサイクリン誘導性siRNA発現システムをES細胞に導入し、ES細胞分化途上における遺伝子機能解析システムの開発に成功した(Hiraoka-Kanie et al.,投稿準備中)。ヒトES細胞に関しては、京都大学臨床病態医科学との共同研究により、ヒトES細胞血管分化システムを構築している。加えてヒトES細胞使用計画「ヒトES細胞を用いた心血管細胞分化機構に関する研究」(研究代表者:山下 潤)が文部科学省審査会において承認され(平成17年1月31日)、ヒトES細胞を用いた研究の開始が可能となった。 【結語】マウスES細胞における新しい包括的心血管分化解析システムの構築に成功するとともに、同システムを用いてヒトの心血管発生研究を行うことが可能となった。
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