研究概要 |
骨形成タンパク質(BMP)は、背腹軸形成をはじめとする様々な形態形成の制御因子として重要な役割を果たしており、BMPシグナルの調節機構を解析することは、初期発生の分子機構を理解するうえで必須である。BMPが細胞膜上の受容体に結合して細胞内シグナル伝達経路を活性化し、核での転写を誘導する過程は級密に制御されており、細胞外、細胞膜、細胞内レベルでそれぞれ働く調節因子が同定されている。特に、細胞内のBMPシグナル調節因子は、発生過程の時期および領域によって異なると予想される「BMPに対する細胞の応答性」の決定に働いていると考えられる。研究代表者は、BMPに対する細胞の応答性の調節機構を明らかにすることを目的として、BMPシグナルを細胞内で抑制する新奇遺伝子の探索と機能解析をおこなった。 活性化型BMP受容体(CA-ALK2)を初期胚で発現させると受容体下流の細胞内BMPシグナルが活性化されて、BMPリガンド非依存的に腹側中胚葉マーカー(グロビン遺伝子)が誘導される(Suzuki et al.Dev.Biol.189,112-122,1997)。研究代表者は、発現クローニング法を用いてアフリカツメガエル原腸胚cDNAライブラリーをスクリーニングし、グロビン遺伝子の発現を指標としてCA-ALK2によって誘導される細胞内BMPシグナルを抑制する遺伝子を複数単離した。単離した遺伝子の一つ(G78)は、ホメオドメインを持つ転写因子をコードしており、初期発生過程では受精卵から初期神経胚期において強い発現が認められ、以後急速に発現が消失することが分かった。In situハイブリダイゼーション法による発現領域の解析から、G78の発現は後期原腸胚から次第に神経板に限局し始め、神経胚期においては神経管の一部にのみ発現が認められた。
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