1.HpOtxL mRNAの時間特異的発現をになうシス調節領域の同定 バフンウニ胚では、単一のOtx(HpOtx)遺伝子から発現時期の異なる2種類のHpOtx mRNAが転写される。HpOtxE mRNAは未受精卵から胞胚にかけて発現し、胞胚期では予定内胚葉に発現が限定される。一方、HpOtxL mRNAは、胞胚期から発現が開始し、原腸胚期では外胚葉、プリズム幼生では口側外胚葉と原腸に発現が限定される。我々は、後期型HpOtxLの特異的発現に注目しその転写調節機構について研究を進めてきた。これまでに時間特異的な約1.8kbのシス調節領域を第一イントロン内に同定した(HpOtxLエンハンサー)。 エンハンサーコア領域には、1箇所のOtx結合部位と3箇所のGATA結合部位が検出された。HpOtxLエンハンサーからそれぞれ結合部位を削りシス調節活性を調べたところ、Otx結合部位の欠失により著しい活性の低下が見られた。また、3箇所のGATA結合部位のうち2箇所の欠失は、エンハンサー活性を発生時期依存的に上昇させた。これらの結果から、Otx結合部位が転写活性化を2箇所のGATA結合部位が転写の抑制にそれぞれかかわることで、時間特異的エンハンサーが機能すると考えられる。 2.HpOtxLエンハンサー結合タンパク質の検索 エンハンサーコア領域に結合しHpOtxL mRNAの時間的発現制御にかかわる転写因子を検索するため、コア領域を4つの断片に分け、ゲルモビリティシフト解析を行った。Otx結合部位とGATA結合部位を含む断片をプローブとした時、複数の強いシフトバンドが検出された。シス調節活性の解析からOtx結合部位が転写活性化に必須であることが示されている。そこで、シフトバンド中にOtxが含まれているかどうかを、抗ウニOtx抗体を用いたスーパーシフト解析により調べ、複合体中に確かにOtxが含まれることを示した。
|