研究概要 |
脊椎動物内胚葉の分化,領域化に関わる分子機構は他の胚葉由来の組織に比べ,著しく情報が少ない.そこで,内胚葉領域化および内胚葉分化に関わる分子群の単離を中心に研究を進めた. 内胚葉領域化に必要な分子群の探索 未分化なニワトリ胚st.5の内胚葉,領域化直後と考えられるst.8-11の後腸内胚葉,st.11の前腸内胚葉を集め,microchipを用いてそれぞれの組織に発現する遺伝子を同定した.このうち各組織に特異的に発現する遺伝子を40ずつ選び,その発現をRT-PCRでチェックしたところ,そのほとんどがmicrochipを使った解析の通り,各組織に特異的に発現していた.現在これらの遺伝子の詳細な発現パターンおよび機能について解析を進めている.この研究により,初期内胚葉の領域化に関わる分子マーカーが飛躍的に増え,領域化の分子機構に大きく迫ることが期待される. 内胚葉分化因子の探索 脊椎動物で内胚葉分化に重要な転写因子をコードするSox17の下流因子の探索のため,次のようなスクリーニングを行った。Sox17の発現が完全に消えH.H.st.5-6のウズラ胚から内胚葉を集め,expression libraryを作製し,これをプールにわけ,そこから作製したRNAを,casanova MOと共にゼブラフィッシュ受精卵に顕微注射した.casanovaはSox17の直接の上流因子として知られ,その突然変異体は内胚葉を完全欠損するため,RNAのうち,内胚葉欠損表現形をレスキューするようなプールをスクリーニングした.レスキューしたプールをさらにわけ,同様なスクリーニングを繰り返し,クローン数が100個になった時点で全てのクローンの塩基配列を読んだところ,今までに知られた内胚葉遺伝子は含まれていなかった.現在スクリーニングを続けており,この方法によって新規の内胚葉分化関連因子がとられてくることが期待できる.
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