胚性内胚葉からは、肺、膵、肝、腸などヒト成人病疾患に深く関与した臓器が発生する。その重要性にも関わらず、哺乳類内胚葉分化機構については、特異マーカーが無いこと、また内胚葉の発生は、そのものの分化のみならず中、外胚葉発生に強く影響を与える為に表現系が複雑であることから、殆ど解析なされていないのが現状である。私達は、マウスSox17遺伝子を新規に単離し、Sox17遺伝子が胚性内胚葉に特異的に発現しており、またSax17ノックアウトマウス、キメラマウスの解析結果から、Sox17欠損個体は、中、外胚葉組織の発生は正常であったが、胚性内胚葉の特異的な欠損により腸原基形成不全を示し、10.5日齢にまでに胎生致死になる事を明らかにしてきた。本研究課題では、欠損個体の致死以降、すなわち胚性内胚葉から初期器官形成期におけるSox17遺伝子の機能解析を行うことを目的にしている。具体的にはノックアウトマウスの遺伝背景をC57BL/6マウスに置換し、表現系をシビアーにすることで、ヘテロ個体においてhaplo-insuffiency表現系が認められる個体を作出しその影響を観察した。 1.Sox17欠損ヘテロマウス個体の肝臓発生の詳細な形態学的検討 平成16年度に得られた遺伝背景を129からC57BL/6に置換したSox17ヘテロマウスの肝細胞の分化能を検討した。即ち、C57Bl/6バックグラウンドのヘテロマウスは生後致死を示すので、それ以前胎生15-18日の胎仔肝臓を採取し、EM包埋後、光顕、電顕観察を行い、またα-fetoprotein等のマーカーを用いて、in situ hybridizationにより分化レベルの確認を行った。 2.Sox17欠損マウス個体からの腸管原基から肝臓の分化能の検討 Hex1(肝臓原基マーカー)陽性であるものの、胎生致死である以前の9.5日胚から肝臓原基を単離し0.45umミリポア-フィルター上で12もしくは24穴プレート上で78時間培養を行い、EM包埋後、厚切り切片を作製し、光顕的に、もしくは超薄切片にて電顕的に形態学的変化を観察した。
|