少なくともマウス胎生14日(E14)生まれの大脳皮質神経細胞は、辺縁帯直下まで移動しなくても、その誕生時期に依存して選別凝集する傾向を有することが示唆された。また、リーリン及びそのシグナル伝達分子の欠損マウスを使った実験により、この特異的凝集能は、リーリンシグナルとは独立に獲得されることが示唆された。そこでさらに、この機構を担う分子基盤を同定することを目標に、胎生期大脳皮質を皮質板、中間帯、脳室帯に三分割する方法を確立し、皮質板及び脳室帯からRNAを調整した。それらを用いてGeneChip解析を行い、脳室帯側で多く発現している分子を検索した。この中には、様々な分子が含まれていたが、本研究では細胞間相互作用に関わる分子に注目しているため、まず、任意のcDNA配列について、塩基配列データベースに自動的に検索をかけ、蛋白質をコードするものをピックアップした上で、さらに分泌シグナル配列または膜貫通ドメインを有する分子を予想するプログラムに自動的に検索をかけ、少なくとも一方で陽性と判定されるクローンを自動同定するプログラムを独自に開発した。これにより、候補分子の数を絞った。さらに絞り込みを行うため、Fantom(「マウス完全長cDNAクローンセット」)の配列データベースとGeneChipデータから得られたクローン群とのマッチングを行い、まずはFantomに含まれているクローンから全てin situ hybridization法による解析を進めた。その結果、脳室帯特異的に発現する分泌性または膜貫通分子として、数十の候補分子を同定することができた。
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