研究概要 |
1.発生時期依存的に脳室帯で発現量を変化させる分子群の同定 脳室帯で産生された大脳皮質神経細胞は、辺縁帯直下まで移動しなくても、その誕生時期に依存して選別凝集する運命を有することを見いだした。そこで、各時期のマウス胎生期大脳皮質の皮質板及び脳室帯からRNAを調整し、GeneChip解析によって、胎生14日(E14)または16日(E16)の少なくとも一方において脳室帯側で皮質板側より多く発現している分子を検索した。その結果、3,985個のクローンが同定された。これらを、E12、14、16の三段階での脳室帯における発現量を比較して分類した。これらについては、論文及びweb上にて公開した。 2.細胞選別を再現性良く実現させる条件の検索と皮質形成における意義 マウス胎生期大脳皮質細胞の再凝集培養実験において、E14生まれの神経細胞(将来第IV層)は、その後に生まれる神経細胞(将来第II/III層)と混合培養しても、また、E14より以前に生まれた神経細胞(将来第V層を構成)と混合培養しても、再凝集塊の中心近くに選別凝集することを見いだした。このように、異なる2種の細胞が再凝集塊を作る際に、再現性良く一方が常に中心近くに、他方が表面近くに選別配置されるのは、いかなる機構により、それは皮質層形成においていかなる意義を有するのかを明らかにするため、コンピューターシミュレーションを試みた。その結果、細胞が自律的に特定の方向へのpreference(隣接するどの細胞間隙をより好んで侵入するか)を有しつつ移動することが、上記の内と外のパターンで再現性良く選別凝集が起こる上で重要であることが示唆された。そこで次に、細胞のこの性質が皮質形成においていかなる意義を有するかを明らかにするため、皮質形成のシミュレーションを行った。その結果、層構造形成において重要な意義を有することが示唆された。
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