脊椎動物の体幹部の形態的特徴である分節性は、胚発生時に形成される体節に由来する。体節は、胚の後方に位置する未分節中胚葉が頭部側から一定の間隔でくびれ切れることによって生じる。体節形成に先立って起こる未分節中胚葉の分化過程については、Delta/NotchとFGFのシグナルが境界形成のタイミングと位置の決定に関与することが知られている。しかし、それに引き続いて起こる形態的に明瞭な体節境界の形成を制御している分子機構についてはまだ十分に理解されていない。本研究では、体節形成の分子機構についてより詳細に明らかにするために、我々が単離した体節形成に異常を示すゼブラフィッシュ突然変異体の解析を行った。 はじめに、我々は頭部側の数個の体節境界が不明瞭な2つの変異体の原因遺伝子がそれぞれ細胞外マトリックスであるfibronectin(fn)とその受容体のサブユニットであるintegrinα5(itga5)であることを明らかにした。次にfnとitga5の体節形成における機能を明らかにするために表現型の詳細な解析を行ったところ、未分節中胚葉における分節形成過程には異常はみられず、体節境界は一旦形成された後に消失していることが明らかになった。また、Fnタンパク質の局在を観察したところ、正常胚では体節境界への集合が見られたが、fn変異体のみならずitga5変異体でもその局在は消失していた。この時、体節境界部の細胞の極性が異常であった。以上のことから、体節形成は境界の形成と維持の2つの過程に分けることができ、Itga5依存的なFnの集合が細胞極性の制御および体節境界の維持に必要であることが示された。更に、これらの変異体でEphrinB2aの機能を阻害すると体節の形態異常が重篤になることから、Integrin-FibronectinがEph-Ephrinと協調的に働いていることも明らかになった。
|