脊椎骨などに見られる脊椎動物体幹部の形態的特徴である分節性は、胚発生時に形成される体節に由来する。体節は、胚の後方に位置する未分節中胚葉が頭部側から一定の間隔でくびれ切れることによって生じる。この分節化を制御する分子機構は脊椎動物で普遍的であると考えられている。これまでの研究によって、体節形成に先立って起こる未分節中胚葉の分化過程については、Delta/NotchとFGFのシグナルが境界形成のタイミングと位置の決定に関与することが知られている。しかし、それに引き続いて起こる形態的に明瞭な体節境界の形成を制御している分子機構についてはまだ十分に理解されていない。我々は、独自に単離した頭部側数個の体節の分節化に特異的に異常をもつゼブラフィッシュ突然変異体の解析を行ない、細胞外マトリックスであるFibronectinがその受容体サブユニットのIntegrin-α5依存的に体節境界部へ集合することによって体節境界に接する細胞の極性が制御され、形態的に明瞭な体節境界が維持されることを明らかにし、論文発表した。さらに、細胞外マトリックスの体節境界への集合と体節境界部の細胞極性制御による体節境界維持の分子機構を詳細に明らかにするために、fibronectin/integrin-α5変異体に加えて、あと2種類の体節境界を維持できないゼブラフィッシュ突然変異体(kt443とkt561)の解析を行った。これらの変異体の原因遺伝子を同定するために、遺伝学的マッピングを行い、変異部位を1〜数cMの染色体領域に絞り込んだ。これによって、この領域に存在することが明らかとなっている遺伝子について変異体の原因遺伝子の候補として検討することが可能となった。
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