本研究では素粒子実験で使用される高速動作が可能な波形記憶集積回路に関しての低消費電力、高速動作、大容量化、高精度化に関する研究開発を行う。光電子増倍管などを使用した放射線検出器は時間情報とアナログ情報を抽出する事が要求され、波形記録を行えば同時に2つの情報が得られ、かつ粒子崩壊チェーンなどの付帯情報も測定できるメリットを持つ。しかし、上記の回路を製作した場合、現状では低消費電力、高実装密度、高速度、大記憶容量の要求を全てを満足するものが存在せず問題であった。この研究終了後上記特徴を持った集積回路をドリフトチェンバー読み出し用及びK中間子、μ粒子崩壊観測用などの加速器実験に対して容易に適用できるようにする。更に非加速器分野の実験例えば宇宙線観測実験、衛星搭載実験、気球実験などにも使用できると思われる。 現在波形記憶回路のプロトタイプに関してはすでに製作し、動作が確認できている。また性能も動作速度500MHz、ダイナミックレンジ2V、8bit相当の波形記録用エレクトロニクスが作られた。消費電力は通常の半分以下に抑えられている。これを更に発展させることで1GHzの多チャンネル低消費電力波形記録装置を製作し実際の実験に応用し、更に改良を進める予定である。
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