研究課題
元素状炭素(EC、あるいはブラックカーボン)は人体に有害なナノ粒子を多く含み、また太陽光の吸収が強いため放射収支に重要な影響を与える。特に、メガシティーを含む東アジア地域はECの大発生源でありながら、測定の困難さや観測的研究の不足のため、詳細な排出統計には不確定性が大きい。本研究ではECの排出源と大気中での動態やそれらを支配する要因を明らかにすることを目的として、代表的なメガシティーである東京都市域において通年(2003年5月-2004年10月)でECの長期観測を行った。測定には従来のフィルターサンプリングを用いたEC/OC測定と比べ、高い時間分解能(1時間)と測定精度を持つ熱・光学方式による炭素分析装置を用いた。また、大気採取口を400℃に加熱したSMPSにより、不揮発性粒子の体積を選択的に測定することで、ECの粒径分布も同時に測定した。SMPSの測定結果より密度と形状因子を仮定して質量濃度を見積もり、EC分析装置によるEC質量濃度との比較を行ったところ、非常に良く一致する結果であった。観測期間中の平均的な粒径分布より、ECの質量濃度には粒径50nm以上の粒子が支配的に寄与していることがわかった。発生源強度の指標として用いたΔEC/ΔCO比(バックグラウンド値からの増分の比)は午前6時頃にピーク(2-3μg/m^3)を示すなどの明瞭な日変動を示した。これは主にディーゼル車の交通量の日変動によるものと考えられる。ΔEC/ΔCO比は冬季を除いて明瞭な季節変化は見られず、気温依存性などの影響は明確には見られなかった。また、東京都でECの排出規制後1年でΔEC/ΔCO比の減少は最大で約30%であった。このように本研究において高精度での測定により得られたΔEC/ΔCO比はEC排出の長期変動を捉え、排出統計を検証する上で有用な指標となることが明らかになった。
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