研究課題
対流圏エアロゾルは大気質と気侯変動に大きな影響を及ぼしており、エアロゾル研究の重要性が国際的に高まっている。特に大都市起源のエアロゾルによる局所的あるいは地域的な影響を評価するためには、発生源近傍で起こる様々な物理・化学過程を系統的に理解する必要がある。近年、揮発性・半揮発性エアロゾルの粒径別化学組成を実時間レベルで計測できるエアロゾル質量分析装置(Aerosol Mass Spectrometer ; AMS)が開発され、世界的に注目を受けている。しかしながら、AMSによるエアロゾルの捕集効率はエアロゾルの形状に依存し、その形状はエアロゾルの組成や相対湿度により変化する。本研究では、大気導入部の温度を低RH条件(RH<50%)に制御するシステムを開発し、全成分についての捕集効率をCE=0.5を仮定して、独立な測定方法である粒子液化捕集-イオンクロマト分析装置(PILS-IC)と熱分離・光学補正法(TOT法)による有機炭素(OC)分析装置(Sunset lab OC)との系統的な相互比較を実施した。その結果、AMSとPILS-ICによる無機エアロゾル成分(NO_3^-、SO_4^<2->、Cl^-、NH_4^+)の測定値に良好な一致が認められ、低RH条件下でCE=0.5の仮定の妥当性が明らかとなった。一方、有機エアロゾルについてもAMSとSunset Labo TOT法によるOCとの比較の結果、AMSで測定した有機エアロゾル(OM)とOCとの比は、先行研究によるOM/OC比(1.6-2.1)と整合的であり、低RH条件下でCE=0.5の仮定の妥当性が認められた。また、東京におけるOM/OC比は有機エアロゾルの組成により変化することが示唆され、夏季には1.8、秋季には1.6を示した。
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Journal of Geophysical Research 109
ページ: doi:10.1029/2004JD004598