1.エアロゾル質量分析計(AMS)の精度の向上 揮発性・半揮発性エアロゾルの粒径別化学組成を実時間レベルで計測できるAMSによるエアロゾルの捕集効率はエアロゾルの形状に依存し、その形状はエアロゾルの組成や相対湿度により変化する。本研究では、Inletの温度を低RH条件に制御するシステムを開発し、独立な測定方法(PILS-ICとSunset lab OC)との系統的な相互比較を実施した。その結果、AMSとPILS-ICによる無機エアロゾル成分(NO_3^-、SO_4^<2->、Cl^-、NH_4^+)の測定値に良好な一致(測定精度20%程度)が認められた。一方、有機エアロゾルについてもAMSとSunset Labo OCとの比較の結果、AMSで測定した有機エアロゾル(OM)と有機性炭素(OC)との比は、先行研究によるOM/OC比(1.6-2.1)と整合的でありことが認められた。また、東京におけるOM/OC比は有機エアロゾルの組成により変化することが示唆され、夏季には1.8、秋季には1.6を示した。 2.加熱インレットと光吸収法を用いた大気中のブラックカーボンの測定 光学手法を用いて大気中のブラックカーボンの質量濃度を高精度で測定するために、加熱インレットを応用し、ブラックカーボンを被覆している散乱性エアロゾルを効果的に除去した後、ブラックカーボンの質量濃度をPSAPおよびAethalometer(AE)で計測する方法について検討した。まず、インレット温度とエアロゾル揮発特性についてAMSを用いて検討した結果、加熱インレットを400℃とすることにより、光学手法において誤差要因となる散乱性エアロゾルを効果的に除去できることが明らかとなった。加熱インレットにおけるブラックカーボンの透過率を走査型モビリティ粒径測定装置(SMPS)により計測した。東京と埼玉において、加熱インレット・PSAP/AE法、および熱・光学法(Sunset lab EC)との精密な比較観測により、各光学法におけるブラックカーボンの質量吸収断面積を算出した。また、加熱によりPSAP/AE法における質量吸収断面積は30%程度減少すること、測定精度が向上することを確認した。
|