研究課題
長崎県地方は、大陸方面から流入する大気の日本列島上の最前線に位置するため、黄砂粒子や大気汚染起源の微粒子などの大気光学的特性や大気環境学的動態を水際で3次元的に観測できる地理的条件にある。平成16(2004)年に長崎海洋気象台で観測された黄砂現象は3月に6日間、4月に5日間の合計11日間であった。しかし、本研究班の総合的な観測によると、2月に少なくとも2日、5月に1日は、大気が黄砂状態になっていたことに相当強い証拠が得られた。さらに、硫酸塩微粒子を主体とすると推察できる大気汚染物質の流入もかなり頻繁に、しかも高濃度で観測された。春季の大気エアロゾルの観測は、長崎大学のスカイラジオメーター、光学的粒子測定器(OPC)、国立環境研究所レーザーレーダー装置、同研究所β線質量濃度計、山梨大非水溶性エアロゾルサンプラーなど用いて連続的に行った。さらに、長崎大学水産学部練習船長崎丸と雲仙ロープウェイ山頂駅(標高1290m)にもOPC測定器を設置して、東シナ海での海上観測と雲仙岳での山岳観測を実施した。特に、2004年3月11日の黄砂現象時には、すべての測定器が順調に現象を捉え、詳細なデータセットを獲得することができた。この日08時に佐世保を出港した長崎丸のOPCは11時に五島近海で高濃度の大粒子状態に突入し、約6時間にわたって濃密な黄砂状態が続いた。しかし、長崎大学や雲仙岳のOPCでは長崎丸ほどの高濃度状態が出現せず、水平方向に顕著にheterogeneousな分布を示した。このことは、寒冷前線通過後の長崎県地方の地上風が北風に転換したために、五島近海の濃密な黄砂粒子が南方に流下し、九州本土に到達しなかったものと考えられる。このような解析の結果は、日本気象学会などで発表するとともに、特定領域研究・笠原班「微粒子の環境影響」の研究成果報告書にまとめた。
すべて 2004
すべて 雑誌論文 (3件)
J.Geophys.Res. Vol.109, D19S17
ページ: doi:10.1029 /2002JD003253
J.Geophys.Res. Vol.109, D19205
ページ: doi:10.1029 /2004JD004920
Proceedings of 16th International Conference on Nucleation & Atmospheric Aerosols.
ページ: 776-780