研究課題
長崎県地方は、大陸方面から流入する大気の日本列島上の最前線に位置するため、黄砂粒子や大気汚染起源の微粒子などの大気光学的特性や大気環境学的動態を水際で3次元的に観測できる地理的条件にある。平成17(2005)年に長崎海洋気象台で観測された黄砂現象は、春季9日、秋季2日の合計11日間であった。春季の黄砂現象は比較的小規模なものが多く、むしろ、小粒径エアロゾルの高濃度状態が目立ち、硫酸塩微粒子を主成分とする大気汚染物質の流入がかなり頻繁になってきている状況が明らかになった。春季の大気エアロゾルの集中的な観測は、長崎大学のスカイラジオメーター、光学的粒子測定器(OPC)、国立環境研究所レーザーレーダー装置、同研究所β線質量濃度計、東北大小型ステップサンプラー、山梨大非水溶性エアロゾルサンプラーなど用いて連続的に行った。さらに、長崎大学水産学部練習船長崎丸と雲仙ロープウェイ山頂駅(標高1290m)にもOPC測定器を設置して、東シナ海での海上観測と雲仙岳での山岳観測を実施した。また、11月7・8日に出現した秋季の黄砂現象では、OPCとスカイラジオメーターによる良質のデータセットを獲得することができた。このときの黄砂現象は、小粒子が非常に低濃度な状態で出現したので、いわば純正な黄砂現象の大気光学現象をスカイラジオメーターによって測定できた。このような状況を長い間待ち望んでいたものであり、獲得したデータは光学的モデルの検証などに非常に有用である。本年は4年間の研究期間の最終年度であったので、研究成果のとりまとめを念頭において総合的に解析を行った。特に、黄砂現象の3次元的な空間分布の非一様性の実態と、小粒径エアロゾルの高濃度状態に関する解析の結果を、日本気象学会などで発表するとともに、本特定領域研究「微粒子の環境影響」の研究成果報告書にまとめた。
すべて 2005
すべて 雑誌論文 (3件)
Water, Air, and Soil Pollution : Focus(2005) 5
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Proceedings of Fourth ADEC Workshop - Aeolian Dust Experiment on Climate Impact-
ページ: 23-26
Proceedings of the 21st Century Asian Conference on Environmental Issues(ACEI 2005)
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