研究課題
磁性半導体の磁区構造を直接評価するため、低温で動作する磁気力顕微鏡装置(MFM)の開発を行なった。低温MFMの場合、冷却効率を向上させるため、MFMヘッド部を極力小型化する必要がある。カンチレバーの制御方式には通常光テコ方式が使用されるが、これではヘッド部周囲にスペースを要するため、本研究では自己検知型カンチレバーを採用した。また、低温ではピエゾ素子の圧電定数が低下し、走査範囲が限定される。そこで、2つの円筒型ピエゾを組み合わせ、極低温でもμm角以上の走査範囲を実現した。本装置では、磁場印加による磁区構造の変化を観測するため、MFMの外部に電磁石を設置した。同電磁石により、水平方向に最大3kOeの磁場を印加することが可能である。また、MFMヘッド(試料面は垂直方向)を慣性駆動の回転ステージの上に装着した。従って、ステージを回転することにより、試料面に対する磁場の角度を0〜90度の間で任意に設定できる。MFMでは、磁気力の外に、表面の凹凸の情報も同時に観測する。これらを分離するため、以下のような方法を用いた。まず、探針を試料に接近させ、近距離力である原子間力を検知しつつ、表面のトポグラフィー(凹凸像)を測定する。続いて、探針を離した上体に固定し、先に測定した凹凸に応じて探針を上下させ、凹凸の影響を除外しつつ、遠距離力である磁気力を観測する。まず上記低温MFMの性能を確認するため、ハードディスクの観察を行った。その結果、液体窒素温度でも明瞭な磁気ビットパターンを観測した。同イメージより、空間分解能は100nm以下と見積もられる。つづいて、低温で強磁性転移を示すマンガン酸化物の磁区観察を行った。その結果、200nm程度の磁区構造を始めて捉えることに成功した。
すべて 2006
すべて 雑誌論文 (2件)
Jpn.J.Appl.Phys. 45
ページ: L114-L116
J.Appl.Phys. -(印刷中)