本研究では第1に、有機化学的手法により系統的に合成したアルカンチオール分子により表面修飾された単分散の金属ナノ粒子について、フェムト秒超短パルス光の位相制御を行った干渉型時間分解2光子光電子分光測定により、表面修飾金属ナノ粒子系におけるエネルギー緩和(インコヒーレント時応答)及び量子位相緩和(コヒーレント時応答)の直接観測を試み、励起電子系及び表面修飾分子の光励起ダイナミクスの詳細を明らかにする。第2に、自己組織化を用いて系統的に作製した表面修飾金属ナノ粒子配列アレイ構造における光励起ダイナミクス、特に光励起ダイナミクスにおける協力現象についても明らかにする。本年度は、モードロックチタンサファイア超短パルスレーザシステムにピエゾアクチュエータを用いたマッハチェンダー干渉計をベースとしたポンプ・プローブ分光用光学系および群速度分散補償用光学系の構築と調整を行い、ほぼ励起用超短パルス光源光学系の立ち上げは終了した。平行して逆ミセル法により合成したナノ粒子に高温化学処理を施すことによって、種々のアルカンチオレートにより表面修飾された単分散の金属ナノ粒子の合成方法を確立し、それらについての通常の実験室光源及び放射光を用いた光電子分光により、ナノ粒子-基板相互作用、化学状態、ナノ粒子-有機分子界面電子構造の詳細、とりわけそれらの表面修飾基依存性について明らかにした。これらの実験結果は次年度に電子ダイナミクスを詳細に議論する上でリファレンスとなる。
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