研究課題/領域番号 |
16032206
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研究機関 | 分子科学研究所 |
研究代表者 |
大島 康裕 分子科学研究所, 電子構造研究系, 教授 (60213708)
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研究分担者 |
長谷川 宗良 分子科学研究所, 電子構造研究系, 助手 (20373350)
藤村 陽 京都大学, 大学院理学研究科, 助手 (00222266)
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キーワード | 強光子場 / フェムト秒コヒーレント分光 / 振動量子波束 / 内部回転 / 回転励起 |
研究概要 |
本研究は、周波数および実時間領域の分光学手法を用いて、強光子場による分子配列・変形の詳細を探ることを目的としている。本年度は、高強度極短パルス光によって実現される非線形過程を利用した、以下の2つの実験的研究を行った。 1.メチル基の内部回転量子波束の生成と観測。単結合軸周りのねじれ運動は、非調和性が高い大振幅な振動であり、コンフォマー間の異性化や電荷移動反応と緊密に関連する。昨年度より、ねじれ運動のプロトタイプであるメチル基の内部回転に関する研究を進めており、干渉分光法の1種であるCOIN法の適用によって波束運動の観測に成功している。本年度は、COIN法に加えて、同一波長のパルス対を用いるpump-probe分光であるTRFD法の開発・適用を行なった。幾つかのトルエン置換体を対象とした実験において内部回転の振動コヒーレンスを明瞭に観測することに成功し、特に、メタクレゾールにおいては電子基底状態での量子波束生成を行うことができた。 2.非断熱的回転励起の実現と観測。高強度のフェムト秒パルスを気相中の分子に照射すると、非共鳴な光であっても分極率異方性によって分子中に双極子モーメントが誘起され、その誘起双極子とパルス光電場との相互作用によって分子はトルクを受ける。そのため、コヒーレントな回転励起が引き起こされる。このような非断熱的回転励起について、今回始めて分光学的検証に成功した。NOについて実験を行い、最低状態に限定された初期回転分布が、非断熱的に高励起状態へ移動することを共鳴イオン化によってモニターした。さらに、モデル計算を行い、実測された非Boltzmann的な分布を定性的に再現することができた。今回開発した非断熱励起分布移動は、回転に関してばかりでなく低波数の振動モードの励起も可能である。また、非共鳴光を用いるので波長は固定で良く、その適応範囲は極めて広いという特長を有する。
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