研究課題
本年度の主な成果は以下の通りである。1.多価分子イオンのクーロン爆発解析による分子構造の直接観察に関して、今年度は前年度に引き続きジメチルスルフィドを標的分子とし、クーロン爆発イメージング法によりその2面角の計測と、SS軸周りの回転に起因する光学異性体の識別について検討を行った。入射イオンはAr^<11+>、実験室系の衝突エネルギーは165keVとし、全てのC原子、S原子イオンが同時計測されたイベントについて解析を行った。解離断片の速度ベクトルの相関をより明確にするために、重心の決定からベクトルの帰属、カイラリティー識別までの解析方法を改良した結果、P-、M-エナンチオマーを明確に識別することができた。2.MCPを用いた多重コインシデンス測定では、MCPの感度の制限に起因する検出効率の低下が深刻な問題となっている。MCP開口部は全体の約50%であり、例えば4重コインシデンスの場合、検出効率は0.5^4=0.06にしかならない。そこでMCPの前にメッシュを配置して電子の追い返し電場を形成し、非開口部で生成した二次電子を追い返して開口部に導いて検出することにより、検出効率の改善を図った。性能評価のためAr^<8+>とN_2の衝突で生成したフラグメントイオンのコインシデンス測定を行ったところ、メッシュ-MCP間の電位差が数十ボルトのときに約1.5倍の検出効率を得た。4重コインシデンス計測効率では5倍の改善が期待される。3.H^+、Ar^<8+>とメタノール(CH_3OHおよびCD_3OH)の衝突実験を行った。前年度の実験で同定した2価イオンの種々の解離チャネルについて、S/Nの改善による帰属の確立を目的としたコインシデンス測定を行った。また時間分解能の改善と多価イオンビームの安定化を目的として、従来行われていたパルスモードに変えてDCビームによる衝突実験のシステムの開発を進めた。
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Proc. XXIV International Conference on Photonic, Electronic and Atomic Collisions (印刷中)