研究概要 |
フェムト秒チタンサファイアレーザーシステムから出力された光パルス(波長800nm,パルス幅<40fs,繰り返し1kHz)の一部を,Arガス(〜0.1Mpa)を充填したセル内に設置された中空ファイバーに導入し,自己位相変調によるスペクトル広帯域化を行った。ファイバー出力後の光パルスを凹面鏡によりコリメートした後、チャープミラー(-45fs^2/refl.)により分散補償を行い,パルス圧縮した。パルス波形をsech^2関数として仮定して自己相関波形から求められたパルス幅は12fsであり,パルスあたりのエネルギーとして0.2mJを得た。得られた12fs光パルスのM^2はM^2<1.6と見積もられ,F/5程度の光学系で集光することで10^<15>W/cm^2を越す光子場強度を得ることが可能である。 コインシデンス運動量画像法により,超短パルス強光子場(14fs,10^<14>W/cm^2)における単一分子のクーロン爆発過程によって生成したすべてのフラグメントイオンを同時検出し,さらにそれぞれの持つ運動量ベクトルを決定した。強光子場(14fs,8.5×10^<13>W/cm^2)中におけるH_2Sの質量スペクトルには解離イオン種,SH^+,S^+,H_2^+,H^+に由来するピークが明瞭に観測され,コインシデジス計測によって,H_2Sの2体クーロン爆発過程には二つの異なる経路, H_2S^<2+>→SH^++H^+:解離経路(a), H_2S^<2+>→S^++H_2^+:解離経路(b), が存在することがわかった。解離経路(a)によって生成したフラグメントイオンの空間分布はレーザーの偏光方向に対して垂直方向にピークを持つ(異方性因子<cos^2θ>=0.31(1))ことが見いだされ,分子主軸(a軸)がレーザー偏光方向に対して平行にあるよりもむしろ垂直にある場合にH_2Sの2重イオン化がおこりやすいことが示された。
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