研究概要 |
本研究では、まずチエニル基を有する3,4-ジホスフィニデンシクロブテン(DPCB)誘導体を合成し、そのチエニル部分をリチオ化し、DPCB連結のための幾つかの官能基を導入した。この研究過程において、ホスファアレンを前駆体とする新規なDPCB合成法も見い出した。さらにエチニルホスフィンに触媒量のブチルリチウムを作用させるだけでジホスファフルベン類が得られることがわかり、簡便かつ有用な合成法として確立することができた。またフェロセニル基やフェナントレン骨格を有するDPCB誘導体およびその錯体を合成し、その性質について検討した。1,2-ジチエニル-DPCBを合成することができたことを受けて、これをチエニル基間でカップリングさせた誘導体およびその金属錯体も合成した。一方では、典型的なDPCB配位子を用いて、その錯体触媒の応用について検討した。例えばDPCB-π-アリルパラジウム錯体あるいはDPCB-ヨウ化銅存在下での臭化アリールと1級アミンもしくは2級アミンとの反応は、良好な収率で対応するカップリング体を与えた。さらに、α,ω-ビス[(ホスフィノエチニル)チエニル]アルカン型前駆体を合成し、DPCBポリマーに誘導、そのジクロロパラジウム錯体を合成し、触媒能を持つことを確認できた。続いて、共役π系型DPCBポリマーの合成を検討し、ジチエニルDPCBユニット間をベンゼン誘導体やフルオレン誘導体で連結したポリマーおよびその錯体を合成することができた。これとは別に、p-位に電子的な影響を与える官能基を導入した立体保護基を開発して、ホスファアルケン類・ホスファアルキン類・ジホスフェン類を合成し、p-位官能基がリンのπ多重結合に与える影響について評価し、さらに電子的な官能基を有する立体保護基あるいはターフェニル型立体保護基を持つDPCB誘導体およびその錯体を合成した。
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