研究概要 |
本研究はアルケニルトリクロロアセテートを基質とするアルドール反応および関連反応において、反応後、系中に添加したメタノールにより再生するキラル金属アルコキシド触媒及びその等価体の開発を目指している。昨年度の研究において、ビナフチル骨格をもつキラルスズジメトキシドおよびキラルスズオキシドがメタノールの存在下、アルケニルトリクロロアセテートとアルデヒドとのアルドール反応において、キラル触媒として機能することを見出した。そこで本年度は、ビナフチル環上に置換基を導入した上記キラルスズ錯体の誘導体を幾つか合成し、アルケニルトリクロロアセテートとアルデヒドとの不斉アルドール反応において、その触媒活性および不斉触媒としての性能について検討を行った。その結果、3,3'位にフェニル基を有するキラルスズジメトキシド触媒を反応系中で発生させ、そのまま本アルドール反応に適用してみたところ、目的とする付加体がアンチ選択的に得られ、そのアンチ体に36%eeのエナンチオ選択性が見られた。さらに昨年度の研究において見出したジブチルスズジメトキシド触媒によるアルケニルトリクロロアセテートとイミン類とのマンニッヒ型反応についてさらに検討した結果、アルデヒド、アミン及びケトンのアルケニルトリクロロアセテートの混合物に、メタノールの存在下で触媒量のジブチルスズジメトキシドを作用させる、いわゆる3成分型マンニッヒ反応においても、対応するβ-アミノケトン体が良好な収率で得られることがわかった。これらの結果から、ジブチルスズジメトキシド触媒は、より極性の高いアミンやイミンの影響によって活性を低下させることなく、マンニッヒ型反応を促進することがわかった。なお、上記不斉アルドール反応で有効であったキラルスズ触媒を用いた不斉マンニッヒ型反応についても検討を行ったが、良い結果は得られなかった。
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