研究概要 |
遷移金属錯体上での酸化的付加過程における立体化学の問題として,ビスオキサゾリニルフェニル(PHEBOX)とロジウムからなる錯体にて,置換オレフィン類のヒドロシリル化とそれに続く酸化反応によって第2級アルコールをエナンチオ選択的に合成することに成功した。特に,アルコキシシラン類を用いることによって反応が効率的に進行することを見いだした。また,錯体をカチオン錯体へと変化させることにより反応速度が5分の1になることを見いだした。光学収率は95%に達した。さらに,アセテート錯体にすることにより初期活性のいらない活性な触媒となることを見いだした。また,このアセテート錯体を用いるとトランス体のオレフィンを位置選択的に高光学収率で変換できることも発見した。次に,この触媒系をα,β-不飽和エステルの共役還元に適用したところ,1mol%のRh(Phebox)触媒にて反応時間が1時間以内で,8種類の基質をそれぞれほぼ定量的な収率で90〜98%の光学収率を達成した。このようなヒドロシランも用いた還元系も従来の水素を原料とした系に相当する高効率を達成したのは画期的であると考えられる。現在この触媒系を,アクリル酸エステルとアルデヒド類の縮合反応に適応したところ,アルドール生成物を95%を越える収率で,アンチ選択的に得ることに成功した。アンチ体の光学収率は98%に達した。アリールアルデヒドから,アルキルアルデヒドに変化させてもアンチ選択性は変化さず,かつ高光学収率を維持することもわかった。このように,上記錯体分子触媒の還元系を,応用しながら,有機合成的に有用な反応へ展開できたことは特筆すべき成果と考える。今後,この反応の機構を明らかにすることにより効率的な錯体触媒に進化できるものと考えている。
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