研究概要 |
オリゴシラン鎖を介した光励起電子移動ならびに電荷再結合におけるケイ素鎖長および立体配座の効果に関する知見を得るために,オリゴシラン鎖の末端にアルキンまたはフェニレンをスペーサーとしてドナー・アクセプターを有する分子の合成と評価をおこなった。ドナーとしては,亜鉛ポルフィリン,アクセプターとしては,フラーレンC_<60>またはフリーベースポルフィリンを用いた。 まず,フラーレンC_<60>をアクセプターとして用いた場合,ペルメチルオリゴシラン鎖(-(SiMe_2)_n-;n=1〜5)ならびにビシクロ骨格を有するジシラン(1,7-ジシラビシクロ[5.5.0]ドデカン)を用いてケイ素鎖の立体配座がsynまたがantiに制御されたテトラシラン部位をそれぞれリンカーとする一連の分子の合成に成功し,それらの定常吸収,532nmのレーザーで励起した際の過渡吸収,蛍光寿命測定をおこなった。ベンゾニトリル中での過渡吸収測定において,亜鉛ポルフィリンラジカルカチオンならびにフラーレンラジカルアニオンの発生が観測され,光励起による亜鉛ポルフィリンからフラーレンへの電子移動が起きていることが明らかとなった。鎖長ならびに立体配座依存性の詳細については,現在おこなっている測定結果の解析より定量的に明らかになると期待される。 また,フリーベースポルフィリンをアクセプター,ジシラン(-(SiMe_2)_2-)をリンカーとした分子の合成にも成功し,定常吸収・発光スペクトル測定より,亜鉛ポルフィリン部分からフリーベースポルフィリン部分へのエネルギー移動が起こっているところまでは現在までに確認している。
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