研究概要 |
(1)二重活性化機構を持つ触媒系による不斉Morita-Baylis-Hillman反応の開発 Morita-Baylis-Hillman(MBH)反応は、アミンやホスフィン類を触媒として進行するα,β-不飽和カルボニル化合物とアルデヒドの付加反応である。今回、二種の異なる金属を構成要素とする複合金属触媒とルイス塩基との二重活性化による、エナンチオ選択的MBH反応を検討した。 我々が以前開発した、Al-Li-bis(plnaphthoxide)錯体(ALB)あるいは、La-Li_3-tris(binaphthoxide)錯体(LLB)をLewis塩基であるBu_3Pと組み合わせた場合には満足のいくエナンチオ選択性は見られなかったものの、BH_3・THF、BuLiおよび、BINOLを1:1:2の比で混合して調製したB-Li-bis(binaphthoxide)錯体(A型BLB;16mol%)とBu_3P(10mol%)を用いると、定量的に、46%eeで目的物が得られた。本反応において、Lewis塩基の添加は必須であった。ホウ素を含む錯体を種々調製して検討した結果LIB(s-Bu)_3HとBINOLを1:1で混合して調製したB-Li-binaphthoxide錯体(B型BLB)を用いると高い光学純度で目的物が得られた。B型BLBは、環状エノンを基質とするMBH反応において、高エナンチオ選択性を示す初めての触媒である。本触媒は、ある程度の基質一般性も示し、シクロヘキセノンとイソプロピルアルデヒドとの反応では99%eeを達成することができた。 本反応の展開として、金属を含まない不斉有機分子触媒を酸-塩基型触媒と.して用い、α,β-不飽和カルボニル化合物とイミンとの付加反応であるaza-MBH反応の開発にも成功した。 (2)二核バナジウム触媒による2-ナフトール類の酸化カップリング反応 触媒的不斉酸化カップリング反応において、触媒を構成する二つのバナジウムがそれぞれ協調して2分子の2-ナフトール誘導体を活性化できれば、光学活性なビナフトール誘導体が得られる。触媒の溶解度やエナンチオ選択性の向上を期待して様々な二核バナジウム錯体を合成して、2-ナフトール誘導体の酸化的カップリング反応に適用した。ビナフチル骨格の触媒と比較して、活性の低下が見られた触媒もあったものの、エナンチオ選択性についてはいずれもビナフチル骨格をしのぐ結果が得られた。
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