研究概要 |
我々は不斉配位子として研究例の無かったイソオキサゾリン環の配位能に着目し、スピロ型光学活性配位子spiro bis(isoxazoline)ligands(SPRIXs)の設計・合成に成功している。今回、Pd-SPRIX触媒を用いる不斉分子内アミノカルボニル化反応の開発と光学活性スピロ型不斉配位子の効率的合成について研究を行った 1.触媒的不斉分子内アミノカルボニル化反応の開発 Pd-SPRIX触媒は、メタノール中、一酸化炭素雰囲気下、環化反応と一酸化炭素挿入反応が連続して進行することで、アルケニルアミドから環状□-アミノ酸誘導体を与える。よりルイス酸性の高いPd金属塩を用い、嵩高い置換基を有する配位子から調製したSPRIX系触媒を用いれば、さらに効率的かつ高エナンチオ選択的に反応が進行すると考えた。検討の結果、[Pd(CH_3CN)_4](BF_4)_2と(M,S,S)-i-Pr-SPRIXから調製した不斉触媒を用いると、アルケニルウレアから化学収率92%、不斉収率86%eeで二環式合窒素化合物が得られることがわかった。 2.SPRIX配位子の効率的光学分割法の開発 SPRIXとキラルなPd錯体とでジアステレオマー錯体を調製し、再結晶などの簡便操作によるSPRIX配位子の効率的光学分割を試みた。ラセミ体SPRIXに対してシクロパラデート化合物を0.5モル当量用いて、メタノール中で錯体生成反応を行い、4当量のNH_4PF_6で処理することにより、ジアステレオマー錯体混合物を収率87%で得た。この混合物を分別再結晶した後、1,2-bis(diphenylphosphino)ethane(dppe)との配位子交換反応により、光学的に純粋なSPRIXを得ることに成功した。 3.新規スピロ型配位子のコンビナトリアル合成 置換基とスピロ環サイズが異なり、さらに金属への配位部位としてイソオキサゾリン、イソオキサゾールを持った新規スピロ型配位子のコンビナトリアル合成を行った。マロン酸ジエチルを出発原料として、様々なハロゲン化ホモアリルとの反応により多様な新規スピロ型配位子の効率的合成に成功した。
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