研究概要 |
本研究では配位結合を用いた超分子科学的な集積法によってポルフィリンを多数集積し、その内部にゲスト分子を取り込むことができるような反応場を形成した。 1.トリポッド型配位子を内包する光捕集ポルフィリンマクロリング 両末端に2つのイミダゾリル基を有し2つのm-フェニレンによって連結されたトリスポルフィリン(1)を合成し、配位自己組織化によって9枚の亜鉛ポルフィリンから形成されるリング状錯体2を構築した。1H NMRスペクトルではリングの内側から配位しているイミダゾリル基のピークが外側からのものより高磁場側にシフトしており、リング構造を明確に示唆した。また2はポルフィリン9つの集積による蛍光量子収率の減少は見られず、光捕集アンテナ機能を有していることが分かった。錯体2は、3座のゲスト配位子を強力に取り込む反応場を有している。電子アクセプターであるフラーレン分子を有したトリポッド配位子(3)を合成し、トルエン溶液中で滴下実験を行った。滴下に伴い蛍光強度の減少が見られ1当量以上でほぼ完全に消光し、ポルフィリンリングからフラーレンへの非常に効率よい電子移動が起こっていることが示唆された。1当量で消光したことから3と2は安定な1:1錯体を形成することが分かった。 2.ルテニウム錯体架橋亜鉛ポルフィリン六量体の合成とヘキサアミン配位子との相互作用 4,4'-ビス亜鉛ポルフィリニル-2,2'-ビピリジン4を合成し、これをルテニウムへ配位させることでルテニウム(II)トリスビピリジン(Ru(bipy)_3)錯体を介した亜鉛ポルフィリン六量体5の構築およびホスト分子としての性質について検討した。ヘキサアミノメチルRu(bipy)_3錯体6との相互作用を紫外可視吸収スペクトル滴定で検討したところ2:1、1:1、1:2錯体が順次形成される挙動が観測された。
|