研究概要 |
ホスフィノボラン(R_2P=BR_2)は,ホウ素とリンとの間にπ結合を有する。このπ結合は、アルケンに比べると弱く、容易に開裂して多量体を生じる。このため、ホスフィノボラン(R_2P=BR_2)は、P-Bを骨格とする無機ポリマーの原料として注目されている。今回我々は、リン上の置換基をCpFe(CO)_2としたメタラホスフィノボランCpFe(CO)_2P(Ph)-BCl_2の合成を試みた。その結果、メダラホスフィノボランそのものは単離できなかったが、これを中間体として経たと考えられる2量体の合成に成功した。X線解析の結果より、この2量体では,2つの鉄フラグメントがP_2B_24員環によって架橋された構造をしていることが判った。現在この4員環骨格の開裂を利用した単量体化あるいは、ポリマー化について検討している。 2つのメタルフラグメントを近傍に配置するために、リン配位子を架橋とすることは,広く行われているが、P-P直接結合を架橋にした例は比較的限られている。この原因はP-P結合が比較的切れ易いことにある。そこで、新たな架橋配位子として、ナフタレン骨格でP-P結合を補強した配位子1,2-dihydro-1,2-diphenyl-naphtho[1,8-c, d]1,2-diphospholeを合成し、2核錯体合成へ利用した。この配位子はP-P結合に対して2つのフェニル基がtrans配置となっていた。この配位子を用いて、右に示した方法により2つのリン上にM(CO)_5フラグメント(M=Cr, Mo, W)を導入すると2つのメタルフラグメントがcisおよびtrans配置となった2核錯体が得られた。これらの錯体における架橋部は、期待したとおりの熱的安定性を示した。
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