研究課題/領域番号 |
16033247
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
成田 吉徳 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (00108979)
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研究分担者 |
谷 文都 九州大学, 先導物質化学研究所, 助教授 (80281195)
島崎 優一 九州大学, 先導物質化学研究所, 助手 (80335992)
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キーワード | 水の酸化 / 酸素発生 / 光合成 / マンガン二核錯体 / 酸素活性化 / 呼吸 / 末端酸化酵素 |
研究概要 |
生体内でのエネルギー変換に関与する酸素分子活性化および水の分解の二つの可逆的反応を効率的に行うテーラーメイド触媒創成のために、それぞれ対応する酵素の反応を模した活性中心モデルを用いて反応を詳細に解析した。その結果、次の2点の成果が得られた。 1.酸素活性化により酸素を水へと変換する反応触媒として、末端酸化酵素活性中心に存在する4種の要素、銅錯体-チロシン残基-鉄ポルフィリン-鉄へのイミダゾール軸配位子、の酸素活性化における機能を明らかにするために、順次これらの残基を入れた化学モデル分子を合成し、その酸素との反応を低温でスペクトル法により追跡した。その結果、(1)銅-鉄イオン間に出来たペルオキシ錯体は通常、μ-オキソ錯体へと分解するが、チロシル残基相当のフェノールが酸素活性化中心近傍に存在すると、この分解過程に大きな影響を与える、(2)酵素活性中心同様、4種のグループを一分子内に取り込んだモデルにおいては、ペルオキシ錯体[Fe(III)-O_2-Cu(II)]はスーパーオキシ錯体[Fe(III)-O_2^・/Cu(I)]へと変換されることを見出した。後者は初めての知見であり、酵素において最初の酸素付加体がスーパーオキソ種であることをうまく説明し、しかも銅錯体が存在することによりこの酸素付加体が極めて安定化されることが明らかとなった。 2.水の酸化分解を行う光合成光化学系IIに存在するマンガン4核錯体の機能モデルとしてマンガンポルフィリン二量体が有効であることが明らかとなっている。その一回転反応を化学的酸化剤を用いて行うことにより酸素-酸素結合形成と酸素分子発生を明らかにするために行った。その結果、Mn(V)=O種が水(あるいは^-OH)と反応することにより酸素発生を行っていることを明らかにした。この成果はMn錯体を含む結晶構造の発表前に公表されたことからも、化学モデルによる成果として大きな意義を持つ。
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