研究概要 |
二点補足による分子状酸素あるいは過酸化水素の活性化を機軸とする触媒的不斉酸化反応の実現に向けて、新規三脚型キラルアミン(LH_2)を合成し、これを配位子としてシス構造を有する各種金属錯体の調製を行い、その不斉触媒能の評価および配位構造の解析を行った。これまでに、触媒活性や不斉誘起能はともに不十分ながらも、LH_2とTi(O^iPr)_4から調製したチタン錯体が過酸化水素を共酸化剤としてスルフィドの不斉酸化反応を触媒することを見出した.(5mol%,38%,39%ee)。L・Tiは溶液中では単核のシス構造をとっていることが^1H NMRの解析から示唆されたが、徐々に加水分解を受けて触媒不活性なトリ-μ-オキソ三核錯体を生成することが分かった。また、この三核錯体の単結晶X線構造解析に成功し、各チタン原子は不斉中心となっており、同一の絶対配置をとっていることを明らかにした。これは、配位子上の不斉中心がキラルなコンホメーションを制御し、これが中心チタン原子の立体化学を決定していることに起因している。一方、キラルアミンLH_2は、同一分子内に塩基性および酸性部位を有しており、これらの官能基の協同効果により特異な不斉反応場を構築するものと期待した。そこで、LH_2を有機触媒(5mol%)としてメソ型環状酸無水物の不斉加メタノール分解(不斉非対称化)を検討したところ、かさ高い基質に対して最高78%eeの不斉収率を達成した。興味深いことに、LH_2のフェノール性水酸基を片方だけまたは両方ともメトキシメチル基で保護した誘導体は全く不斉誘起を示さず、触媒活性も著しく低下した。また、この種の反応ではこれまでにシンコナアルカロイド誘導体を用いて高エナンチオ選択性が達成されているが、本研究で用いたかさ高い基質は全く反応しないことが報告されている(投稿準備中)。
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