研究概要 |
動的キラル銅錯体を触媒として1)ピペリジン環への不斉アルキル化および2)ジオール不斉認識を行い、1)、2)とも高い不斉収率を得る条件を見出した。1)に関しては、平成15年度に引き続いて、以下の研究を行った。即ち、キラルビスオキサゾリン(L^*)、Cu(II)の存在下に、求核剤(Nu)としてマロン酸ジアルキルエステルを、N-保護ピペリジンの電極酸化によって得られるN-保護-β,γ-不飽和-α-メトキシピペリジン(S)に反応させると、先ず、L^*、Cu(II)、Nuの3者からなる動的錯体が生成し、この条件でSから生じるアシルイミニウムイオン中間体に動的錯体が攻撃して不斉炭素間結合形成が起こることは15年度に見出している。この不斉炭素間結合反応において、N-保護基をp-メトキシベンゾイル基にしたSに対してマロン酸メチルフェニルエステルをNuに用いると81%eeの効率で、Sのα位に炭素間結合が選択的に起こることを見出した。2)に関しては、L^*、Cu(II)の存在下に、meso-1,2-ジオールに塩化ベンゾイルを反応させると、L^*、Cu(II)、1,2-ジオールの3者からなる動的錯体に塩化ベンゾイルが不斉ベンゾイル化し、meso-1,2-ジオールを不斉非対称化できることは既に見出していた。しかし、この反応においては、meso-1,2-ジオールの種類により、分子内アシル移動によるラセミ化が起こるために低い不斉収率しか得られない場合が多くあった。平成16年において、分子内アシル移動が起こらない反応系を開拓した。それは、塩化ベンゾイルの代わりにフェニルイソシアナートを用いたフェニルカルバモイル化である。例えば、cis-1,2-シクロペンタンジオールでは0%eeであったベンゾイル化が、フェニルカルバモイル化にすると66%eeに改善された。
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