研究概要 |
本研究では、14族金属とテルル元素との動的な結合を利用する新しい反応試剤を設計・合成することを目的として研究を行っている。さらに、14族金属テルリドのユニークな反応性から生まれる反応生成物を利用した有機小分子の新しい構築法の開発を図っている。本年度は、シリルテルリドと反応する基質の設計や、シリルテルリドを用いた反応により得られた生成物の変換反応について重点的に検討を行ない、主に以下の2点を明らかにした。 1.2,3-ジ置換インドールの合成 これまでの研究により、トリエトキシシリルフェニルテルリドを用いたイミンとイソニトリルとのラジカルカップリング反応を報告している。イソニトリル基質として2-アルケニルフェニルイソニトリルを用いることで、2,3-ジアルキル置換インドールを高収率で合成できることを明らかにした。 2.立体選択的な多置換アルケン合成 トリメチルシリルフェニルテルリドとカルボニル化合物とアルケンの反応により得られるビニルテルリド構造を持つシリル化されたアリルアルコールに対し、テルル-金属交換反応を行ったところ、Z-体のビニルシランのみが単一の立体異性体として得られた。本反応の最大の特徴は、生成物の立体化学が出発基質の立体化学に依存していない点であり、E-体およびZ-体いずれのビニルテルリドを用いてもZ-体の生成物のみが得られた。さらに、ビニルシランからアルケンの立体化学を保ったまま様々な炭素置換基へと返還できることを明らかにした。
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