研究課題
これまでに(アレーン)クロム錯体の面不斉を利用した立体選択的クロスカップリング反応を用いて、同一の面不斉源からアトロプ異性体の両エナンチオマーを作り分けることに成功している。したがって、この両ジアステレオマーからそれぞれRおよびSの軸不斉を有するビアリール体を作り分けることに成功している。このような方法論を利用して、我々は軸不斉の立体化学のみが異なるコルペンスアミシA及びBのような生物活性天然有機化合物の合成研究を行ってきた。ところが、この合成研究の過程において、カップリング反応により得られたSyn体を軸異性化によりAnti体へと変換し、コルペンスアミンBを合成しようとした際に、予想していた軸異性化が起こらず、クロムトリカルボニル基が反対の芳香環面に再配位することがわかった。そこで、このような例のない面不斉が反転するという現象に興味を持ち、検討を行なった。その結果、クロム錯体側の置換基がアルキル基や、sp^2炭素を有し、立体的に小さいアルデヒドなどの場合には軸異性化が進行するのに対し、sp^3炭素を有しベンジル位を有する置換基の場合にはクロムトリカルボニ基が反対の芳香環面に再配位し、面不斉反転することがわかった。さらに、C-N結合における軸不斉を有するN-アリールインドール類を芳香族求核置換反応により立体選択的に合成することにも成功した。これまでに、C-N結合生成の際に直接不斉を誘導した例はなく、今回初めて可能とした。
すべて 2004 その他
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