研究概要 |
シアナミド架橋多核錯体の中でも、三核以上のコアを持つものに関しては、これまでその合成法はほとんど未知である。本研究ではシアナミド架橋によりどのような構造および反応性を持つ多核コアを構築できるのか、前周期から後周期まで幅広い遷移金属元素に対して検討することを目的として、以下の研究を実施した。 まず、これまでの研究でイリジウム(III)では一連の四核および二核シアナミド架橋錯体が得られることが判明していることから、同属のコバルト、ロジウムについて検討した。コバルト(III)ではマクロサイクル型錯体[(Cp^*Col)_4(NCNH)_4]および引き伸ばされたキュバン型錯体[(Cp^*Co)(NCN-N,N,N')_3(CpCo)_3(NCN-N,N,N)]が得られること、ロジウム(III)では引き伸ばされたキュバン型錯体のみが単離されることが判明したが、イリジウムとは異なりいずれにおいてもキュバン型錯体への変換は見られない。また、コバルト(II)ではアニオン性三核錯体[(Cp^*Co)_3(NCN)_2]^-が生成した。 一方、平成15年度に開発したルテニウム三核クラスター[(Cp^*Ru)_3(NCN)_2]^-の反応性を詳しく検討した結果、過剰のHClとの反応では三核コアの酸化を伴って、ニトリル部分でside-on配位したシアナミド錯体[(Cp^*Ru)_3Cl(NCN)(NCNH_2)]^+が生成すること、ボランとの反応ではモノ(ボラン)アダクト、ビス(ボラン)アダクトが順次生成することを見出した。前者の反応で得られた錯体のside-onニトリル部分はニトリルの配位様式として新規なものであり、興味深い。 このほか、チタン三核錯体[(CpTiClO)_3]からは2つのシアナミド架橋で結ばれたチタン六核錯体の合成など、新規な多核骨格の構築にも成功した。
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