フェノキシド基を基本骨格にもつ多座配位子を設計、合成し、金属錯体との錯形成反応を検討した。例えば、フェノキシド基をオルト位でメチレン鎖で連結した鎖型のフェノキシド3両体、一個のメチン炭素で連結した3脚型3座配位子、一重項カルベンを組み込んだハイブリッド型多座配位子等を合成し、4族遷移金属錯体の合成を行った。 鎖型フェノキシド3両体を用いた反応では、2つの金属間に3つのヒドリド配位子が架橋した2核錯体が得られた。ジルコニウム錯体では酸化数IVであり、金属間に結合はない。一方、チタン錯体では酸化数がTi(III)の3重ヒドリド架橋2核錯体が得られた。温度可変NMRスペクトルでは化学シフトに温度依存性はない。さらに、X線構造解析より、金属間の距離は極めて短く、金属間結合の存在を示している。これはチタン3価の化合物で金属間結合をもつ極めて珍しい化合物である。 3脚型3座配位子を用いた錯体の合成では、反応させる金属の量論により、単核から3核錯体まで効率よく合成できることを明らかにした。 ハイブリッド型多座配位子では、一重項カルベンが電子欠損型金属に結合した極めて珍しい化合物を安定に合成できることを明らかにした。さらに、この錯体がエチレンに対し、高い反応性を示すことを明らかにした。 今後、本研究で得られたフェキシド錯体の合成に関する知見を基盤に、新しいフェノキシド錯体の化学に関して研究を展開する。
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