研究概要 |
大学の実験室を始めとする研究教育現場においては,従来より目的指向型で安全は軽視されがちであったが,近年の産業界における安全成績の向上とは裏腹に,事故の増加傾向が顕著であり,その抜本的対策が指摘されている。特に化学系を中心とする理工系実験室においては,多種多様な化学物質をさまざまな条件で取り扱うため化学物質自身の持つ危険性および化学反応に伴う危険性に関する情報の欠如や事前評価不足による事故が多発し,負傷者も発生している。本研究では,理工系研究教育機関における事故の内,発火,爆発,火災事故に焦点を絞り,事故事例の収集,分析,データベース化を図るとともに,「実験」という非定常作業に潜むフィジカルリスクを解析することにより,実験時のリスク管理手法に関する提言を行うことを目的とし,さらに,危険性情報が未知である物質や反応に対する安全,迅速な評価手法を提案し,その適用性について検討することとした。 初年度(平成16年度)における本研究は以下の3項目に大別して進めた。 (1)研究教育現場における事故事例収集と解析:650件の事例を収集した。 (2)事故事例のデータベース化:キーワードの設定により、検索を容易にするシステム化を図った。 (3)化学物質および化学反応の危険性評価手法の検討:複数の試験法を用いた段階的な評価方法について検討を行い,簡易・迅速かつ有効な評価フローの提案を行った。 最終年度となる次年度は,上記(1)〜(3)の結果に基づき,リスク解析に基づく管理手法について検討を行い,効果的な管理手法のあり方について検討を行う予定である。
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