研究概要 |
透過型画像に3次元情報が反映されていることに着目し,胃X線二重造影像を対象として,2次元投影像から3次元情報を抽出・利用する方法を検討した.まず,濃淡構造が複雑な中から,観察の対象になる個々の線を線集中度フィルタを用いて高精度に検出した.そして,交叉構造の幾何学的性質およびX線の減衰モデルから3次元情報を求めた.さらに,効果的な読影支援のための表示を試みた. (1)交叉情報の利用 2次元投影像では,3次元的に交叉していない2本の線に対して交叉が発生するため,線の理解の手法が不可欠である.そこでまず,オブジェクト空間表現を定義し,投影像上の交叉の解消を図った.この方法の効果として,胃壁ひだ集中の安定な検出が可能になり,曲線端点の進行方向の延長線上にひだが集中する領域を想定し,その内部への投票により求めたひだ集中度の分布の局所的ピークとして病変を検出することができた. (2)X線の減衰モデルの利用 胃壁ひだバリウムの濃淡構造は局所的であり,より大きな構造の背景に埋もれることが多い.そこで,X線の減衰モデルにもとづき,濃淡包絡面補正法を用いて背景変動成分(背景トレンド)を推定し,除去した.その結果から線集中度フィルタを用いてひだを抽出し,その尾根線上での平均濃淡値を求めることにより,バリウム付着量の重力による違いを利用して,検出された線を胃の前壁と後壁とに分離できる可能性を示した. (3)3次元情報を活用する診断支援表示 ひだ集中を伴う陥凹型病変の検出結果にもとづき病変候補の属性を診断支援装置の利用者に提示する方法として,位置だけでなく,検出の過程で得られる計測情報も含めて読影作業の補助として効果的に提示する方式を検討した.そして,局所的な画像強調の方法として,胃X線二重造影像による診断で重要な病変周辺部の線状構造とその輝度を強調するための画像合成の手法を提案した.
|