研究概要 |
本研究は,これまで全く情報の無かった星間塵表面における星間分子の重水素濃集過程を実験的に調べることを目的としている. 氷星間塵表面組成として考えられるCO,H_2CO,H_2O固体表面におけるCO分子への水素原子付加反応(生成物としてH_2CO,CH_3OHが得られる)の反応速度の違いを様々な温度で実験的に調べた.その結果,CO固体表面では15K付近,H_2O表面では20K付近で反応速度が急激に落ち,H_2CO表面では20Kにおいてもそれほど反応は遅くならなかった.これらの結果は水素原子の各表面に対する吸着係数の温度依存性を反映していると考えられ,20K付近ではCO,H_2O,H_2COの順で吸着係数が高くなることを示唆している.このことは星間塵上における化学進化を考える際は,単に反応する原子・分子だけではなく,反応場を形成する表面分子も重要になることを示している. さらに吸着係数を定量的に調べるために,パルス原子(分子)線装置を構築した.3000〜6000rpmで回転する高速モーターを真空槽内に設置し,予備実験としてパルス分子線を生成し,分子線の運動エネルギーを飛行時間から求めた. 重水素濃集プロセスを調べるには実験で使用する水素,重水素原子線の相対的な強度比を知る必要がある.今年度は様々な実験条件の下でその強度比を調べた.
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