(1)星形成コアにおける重水素分別 星形成コアの重力収縮を数値的に計算し、そこでの分子組成や重水素同位体比の分布と進化を化学反応ネットワークにより求めた。ネットワークは現在観測の進んでいる多重重水素化分子を含む。観測では中心密度が10^5cm^<-3>程度のコアで広い半径にわたって0.05-0.1km s^<-1>程度の収縮速度が得られている。モデル計算では、中心密度が10^4cm^<-3>の平衡解に近い状態から収縮を開始するとこの速度場を再現できた。星形成前の低温なコアでは交換反応によって重水素濃縮が進み、コア中心部で一酸化炭素等がダストに凍結するとさらに濃縮度が上昇する。特に中心密度が10^7cm^<-3>まで高まるとD_3^+/H_3^+比が1よりも高くなることが分かった。近年観測されているND_3/NH_3比はモデルで再現できたが、D_2CO、CD_3OHについては観測値よりも低い重水素比が得られた。高い比を得るには氷マントルの層構造等を考慮する必要があるかもしれない。以上の結果は論文としてまとめThe Astrophysical Journalに掲載決定となった。 (2)原始惑星系円盤表面の光解離領域 SEDの観測から原始惑星系円盤ではダストが星間ダストよりも大きくなっていると考えられる。そこで円盤表面の温度・密度および化学組成の分布を数値計算によって求め、これらのダストサイズ依存性を調べた。また従来の研究ではダストとガスの温度が等しいと仮定されていたが本研究では両者を別々に解いた。得られた結果は以下の通りである。 ・円盤表面ではガスの温度はダスト温度より高く、この差は輝線強度の評価において重要である。 ・ダストが成長すると円盤表面でのガス温度は低下する。一方、紫外線強度は上昇しこれに伴ってCNやC_2Hなどのラジカルの柱密度が高くなる。 研究結果は国際会議で口頭発表した。現在論文を執筆中である。
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