研究概要 |
希土類充填スクッテルダイト(RT_4X_<12>:R=希土類,T=遷移金属,X=プニクトゲン)は、動物園になぞらえるほどの多様な物性を発現する。本研究では、化学的圧力(混晶系の作成)と物理的圧力の印加により発現する物性の差異に着目し、その比較により、充填スクッテルダイトの物性発現機構について知見を得ることを目的とした。 本年度は、混晶系の作成とその物性測定に重点を置いた。まず、混成効果を劇的に変化させると予想されるプニクトゲン置換系の作成を試みたが、常圧下での作成は困難を極め、唯一成功したPrRu_4Sb_<12>のSbをAsに置換した系でも、置換量は僅か1%程度であった。一方、遷移金属置換系では、PrRu_4P_<12>或いはPrRu_4Sb_<12>でRuをOsで置換した系の結晶育成に成功した。特に、Pr(Ru_<1-x>Os_x)_4Sb_<12>では、一方の端にあるPrRu_4Sb_<12>が通常のBCS超伝導物質であるのに対して、他方の端のPrOs_4Sb_<12>は時間反転対称性が破れている等の新奇な超伝導物質として注目を集めている。最近、この二種類の超伝導状態の境界がOs濃度40%(x=0.4)近傍にあるとの報告がなされたが、我々はその濃度を境にPrイオンが感じる結晶場が大きく変化することを見出した。さらに、電気抵抗で温度の二乗の係数(A)がx>0.4の領域でxの増加と共に増加すること、つまり有効質量がOs濃度の増加と共に増加することを見出した。これらのことは、結晶場が有効質量増加と新奇な超伝導の両者と密接にかかわっていることを示唆している。 物理的圧力印加の実験は、圧力印加によるdHvA効果測定による電子状態の変化を追跡することが主たる目的であるが、本年度は、圧力下でもdHvA信号を観測できる高品質単結晶育成に力を注いだ。その結果、希土類充填スクッテルダイトはフラックス物質をインクルージョンとして取り込みやすいことを見出すと共に、適当な育成条件の設定により、インクルージョンのほとんどない高品質単結晶育成に成功した。
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