研究概要 |
1)2準位近藤効果および局所電子格子相互作用の問題を「数値くりこみ群」の方法で研究し、以下のような成果を得た。 a)2準位近藤効果の「2ループの摂動的くりこみ群」による従来の理論(Vladar-Zawadowsky)では、その固定点は擬スピン1/2のsdモデルのそれで与えられる「強結合固定点」か2重井戸間の自発的トンネリングにより「強結合固定点」への流れがカットされるかのいずれかであるという結論であった。しかし。「数値くりこみ群」を用いた本研究によって、モデルを特徴付けるパラメタ空間においてVladar-Zawadowskが見出したものとは別の領域に「強結合固定点」が存在し、二つの「強結合固定点」の領域の境界に沿って「ゼロ結合固定点」の領域が存在することを見出した。「数値くりこみ群」の結果は漸近的に厳密であるので、本研究によって2準位近藤効果の問題に決着がついたと言える。 b)局所的な電子格子相互作用をもつ系の問題を「数値くりこみ群」と「1ループの摂動的くりこみ群」の手法により研究し、2準位近藤効果と同様にモデルを特徴付けるパラメタ空間に「強結合固定点」と「ゼロ結合固定点」の二つの領域が存在することを明らかにした。「強結合固定点」における格子振動モードQの高次モーメントの平均値<Q^<2n>>(n=1,2,3,4)を計算し座標Qに対する有効ポテンシャルは2重井戸構造をもつことを見出した。 2)充填スクッテルダイト化合物やクラスレート化合物は大きなカゴ状の構造の中に金属イオンを含んでおり、金属イオンの安定点は6つないし8つあると考えられている。このような系は「多準位近藤効果」を示すことが期待され伝導電子の状態も強く「くりこまれる」と考えられる。この問題を理論的に解明するため、充填スクッテルダイト化合物の超音波伝播の実験に対応する「4準位近藤モデル」を「数値くりこみ群」と「1ループの摂動的くりこみ群」の手法で研究し、新しいタイプの強結合固定点を見出した。その周りでは電子比熱の増大などの異常物性が現れる(論文準備中)。 3)Prを含む充填スクッテルダイト化合物で現れる結晶場状態(Γ_1-Γ_4)での拡張(不純物)アンダーソンモデルを「数値くりこみ群」の手法で研究し、「局所非フェルミ液体固定点」の存在と「重い局所フェルミ液体固定点」の存在を見出した。また、結晶場の励起エネルギーが温度変化し降温とともに準位の逆転が生じることも可能であることを示した(論文準備中)。
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